数学カフェの中の人達のブログ

数学カフェの中の人達が記事を書きます。

代数学の基本定理をベクトル場の特異点の指数の性質から味わう

この記事は数学カフェアドベントカレンダーの14日目の記事です。

 

adventar.org

 

昨日はまえすとろさんが以下のような内容で書いてくださいました。

lyricalmaestrojp.hatenablog.com


私の今年3大嬉しかったことの1つに入るのが黒田成俊先生の関数解析*1のセミナーが出来たことです。しかもまえすとろさんのような、ご専門に勉強されていた方にまで来て頂いて、感謝の気持ちでいっぱいです。。やってて良かった数学カフェ。。。

まえすとろさんのアドベントカレンダーの記事を通じ、今まで勉強してきたことの更に先が学べて、しかも個人的に興味深い証明手法、組合せ論的手法も用いられていると知り、俄然興味が湧きました。引き続き学習を進めたいと思います。

 

 

さて、私の担当です。元々予定していた内容があったのですが、今朝満員電車の中で常微分方程式の本を読んでいたらとっても面白い定理の証明に出会ってしまい、これは面白すぎる!!今日1日ハッピーだなこれは!というテンションになり、感動そのままにこの勢いで書いてしまおうと思い、この場を借りてご紹介させていただくことにしました。(予定していたものはまた改めて更新します。。。本当にマイペースですみません。。。)

というわけで選ばれた本日のテーマは、

代数学の基本定理
ベクトル場の特異点の指数の性質から味わう」


です。流れは目次の通りです。自身の解釈をあまり含められず、諸々の参考文献を編集しただけのものになってしまい大変大変恐縮ですがお読みくださいますと幸いです。(間違いなどありましたらぜひご指摘ください。)

 

 

 

代数学の基本定理とは

 

代数学の基本定理とは、

 

 

定理

定数でない任意の複素数多項式f(z)は少なくとも1つの複素数の根を持つ。
ただし、複素多項式とは、a_0, a_1, ... , a_n複素数 n自然数とするとき、
 f(z)=a_nz^n + a_{n-1}z^{n-1}+\cdots+a_1z+a_0
という式で表される複素関数のことである。この多項式の根は、f(z_0)=0を満たす複素数z_0のことである。



 

 

という定理です。このとても素朴な定理の最初の証明は方程式論の発展と共にガウスによって与えられましたが、数学の他の多くの分野にも現れます。

そして、あらこんなところに素敵なブログが。
  

 

taketo1024.hateblo.jp

 

代数学の基本定理の詳細な説明が気になる方は上を御覧ください。


また、代数学の基本定理という本の中では、代数、関数論、位相という3つの観点から、この代数学の基本定理の6通りの証明が考察されています。まずはこちらの書籍から簡単なものをいくつか紹介します。(ここでは証明の詳細は追いません。)

 

代数学の基本定理

代数学の基本定理

 

 

 

以下複素多項式\mathbb{C}[x]と書くこととします。

 

 

高等微積分学に基づく証明

 

 


補題1.1

 f(z)\in\mathbb{C}[z] とする。|f(z)| はある点 z_0 \in\mathbb{C} において最小値を取る。

 


補題1.2

f(z)\in\mathbb{C}[z] でかつ f(z) は定数ではないと仮定する。
f(z_0)\neq0 ならば、|f(x_0)||f(z)| の最小値ではない。

 

 


代数学の基本定理の証明1
f(z)をゼロでない複素多項式とする。補題1.1より、|f(z)| はある点  z_0 \in\mathbb{C} において最小値を取る。そのとき、補題1.2より、|f(z_0)|=0 。ゆえに |f(z_0)|=0。なぜならば、そうでなければ f(z_0)=0 は最小値ではないから。したがって f(z)f(z_0)=0 を満たす複素数の根 z_0 を少なくとも1つ持つ。

 

なんととてもシンプル!
続いて、

 

回転数の性質に基づく証明



つぎの曲線を考える。

\gamma (t) = z_0+re^{it}, 0\leq t \leq 2n\pi

 

幾何学的にはこれは、点z_0の周りをn回回転している円である。この曲線を積分すると次の様になる。

\frac{1}{2\pi i}\int_\gamma \frac{dz}{z-z_0} = \frac{1}{2\pi i}\int_0^{2n\pi} \frac{r^{it}}{ire^{it}}dt=n

整数 n は点z_0の周りの曲線\gammaの回転数と呼ばれる。より一般的に\gamma \mathbb{C}に於ける任意の連続的に微分可能な閉曲線で、z_0 \in \mathbb{C}-\gammaとすれば、

 n(\gamma, z_0)=\frac{1}{2\pi i}\int_\gamma \frac{dz}{z-z_0} 

 

は整数であることが示される。この整数 n上記の回転数と一致する。

さて、g(z)=z^nを考える。 C_r を原点を中心とする半径 r の円とする。\gamma (t) = re^{it}, 0\leq t \leq 2n\pi。 この円周上で z^n=r^ne^{int}z が円周上を一回転する間に z^n=r^ne^{int} は半径 r^n の円の周りをn回回転するので、関数 z^n は原点に関して回転数 n であるという。

 

 

 
同伴者の定理
1本のロープによって結ばれた2人の旅行者を考える。1人の旅行者 {f(z)} 
が原点の周りの円周上を旅行する時、ロープの長さ\epsilon がその半径よりも短ければ、仲間の旅行者 {g(z)} も異なった道を通って原点の周りを旅行する。
 
 

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代数学の基本定理の証明2
 f(z)=a_nz^n + a_{n-1}z^{n-1}+\cdots+a_1z+a_0 , a_n\neq 0, n\geq 1 と仮定する。根を求めるために a_n=1 として一般性を失わない。また、a_0=0 ならばz=0 は根であるから a_0\neq 0 と仮定して良い。

f:\mathbb{C} \to \mathbb{C}。また、\lim_{z \to \infty} \frac{z^n}{f(z)}=1

であるから、十分大きい円 C_r に対して、
 |z^n - f(z)| \leq \lambda r^n 。0< λ < 1。また  zC_r 上にある。

任意の r>0 に対してz^n は原点の周りの円 C_r をn回回転している。したがって同伴者の定理より  f(z) も原点の周りの十分大きい円 C_r をn回回転している。
十分小さい円 C_r に対して  C_r 上で  f(z)\approx a_0 であるからf(C_r) は小さい半径に対して回転数0であり、十分大きい半径に対しては原点の周りをn回回転するので、f(C_r1) が原点を通っているような中間の値 r_1 が存在する。故にf(z_0)=0を満たす C_r1 上の点 z_0 が存在する。Q.E.D.

 
 
 
 
さて、このような素朴な定理が、一体どのようにしてベクトル場と結びつくのでしょうか??

 

 

 

準備

 

多様体の基礎

 

準備として必要な定義をいくつか述べます。多少端折っているところもあるので、より正確な定義/議論は

多様体の基礎 (基礎数学5)

多様体の基礎 (基礎数学5)

 

を御覧ください。


以下 1 \leq r \leq \infty とします。


定義(C^r級関数)

座標が (x_1, ... , x_n) である n 次元ユークリッド空間  \mathbb{R}^n の領域  U 上の C^r 級関数 f:U\to \mathbb{R} とは、r回連続的微分可能関数f(x_1, ... , x_n) のことである。
 

 

 

 


定義(C^r写像

座標が (x_1, ... , x_n) である n 次元ユークリッド空間  \mathbb{R}^n の領域  U から座標が y_1, ... , y_m である m 次元ユークリッド空間  \mathbb{R}^m の領域  V への C^r写像 f:U\to V とは、C^r 級関数 y_i=fi(x_1, ... , x_n), (i=1, ... , m) のことである。
 

 

 


定義(C^r微分同相写像

f:U\to VC^r微分同相写像であるとは、f全単射であって、f, f^{-1} 共にC^r 級微分同相写像であることである。
 

 

 


定義(同相写像

f:U\to V同相写像であるとは、f全単射であって、f, f^{-1} 共に連続であることである。
 

 

 


ここまで、領域U, Vをユークリッド空間の領域として考えていましたが、より複雑な曲面を考えるために多様体という図形を考えてみましょう。

2つの紙片の一部を重ねて糊付けすると、より大きな紙片を作ることができます。また、貼り合わせ方を様々に変えれば、色々な曲面を作ることができます。


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 微分形式の幾何学(森田茂之著)より

*2

 

 

2つの  \mathbb{R}^n の開集合U,Vを重ねて張り合わせる、とは、同相写像f:U\to V によってUとVを同一視するということと解釈します。さらに、同じ多様体でも、滑らか、すなわち微分可能な多様体を作るためにはこの張り合わせの写像も滑らかでなくてはなりません。この写像が先程述べた微分同相写像であれば良い、ということになります。

 

貼り合わせ方のルールや開集合を定める位相についての議論などは割愛していますが(※後に追記します。)、このようにして多様体 M を作ることができましたので、多様体上の相速度ベクトル場についていよいよ定義をしていきましょう。

 

ベクトル場

 

まずはじめにベクトル場のイメージを持つために、力学系の観点*3から見た相速度ベクトル場についてお話します。その後、一般のベクトル場について説明します。

適宜、千葉逸人先生の、

 

改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門

改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門

 

 を参照/引用します。千葉先生の本分かりやすくてすごい!

地球上に吹く風邪の流れの様子は、矢印(ベクトル)を使って下図のように表現できます。

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こちらの図は千葉先生のこちらの書籍から引用しました。

改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門

改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門

 

 大事なことなので2回貼りました。。。




このように、ある曲面  M (空間M)の上を運動する物体があるとします(ここではMユークリッド空間の領域として考えることとします)。このときの運動の経路を、曲線 g(t) として下の図に表しています。ざっくりとしたイメージとしては、この時の運動の速度ベクトルをM上の各点で考えて集めたものがベクトル場です。

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速度ベクトルは黄色で書いたもの。



 x\in M をこの運動の始めの状態とし、 x から始まる過程の時刻 t での状態を g^tx で表すとします。このようにしてすべての実数 t に対して、この空間  M の間の写像

 g^t: M \to M

が定まります。これを時間 t 写像と呼び、すべての状態  x\in M を新しい状態 g^tx\in M に移します。たとえば g^0M の各点をそれ自身に移す恒等写像です。さらに g^t について次の式が成り立ちます。

 g^{t+s}=g^tg^s

これは、時間 s 経過した状態から更に時間 t 経過した状態は、時刻 0 から s+t 経過した状態と一致する、ということを表します。過程の初期状態をx\in M に固定すると、点 x はこの曲面 M の中の相曲線 {g^tx; t\in\mathbb{R}} を描きます。

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定義(1径数変換群)

集合 M の1径数変換群とは、M からそれ自身へのすべての実数 (t\in \mathbb{R}) をパラメーターとする写像の族 {g^t} で、すべての s,t\in \mathbb{R} に対し、

g^{t+s}=g^tg^s

であり、g^0 は恒等写像であるものとする。

 

 

 


定義(相空間)

集合 MM の1径数変換群 {g^t} との対 (M,{g^t}) を相流という。このとき集合 M を相空間といい、その要素を相点という。

 

 


定義(運動)

実数直線から相空間への写像
\phi: \mathbb{R}\to M, \phi(t)=g^tx

を流れ (M,{g^t}) による点 x の運動という。

また、この写像による \mathbb{R} の像を流れ (M,{g^t}) の相曲線という。
 

 

さて、ここまでで、ある空間 M 上での運動や流れが定義されました。これからは、より性質のよい運動に絞って話を進めます。性質の良さは、微分可能性を用いて表されます。

 

 

多様体上の(相速度)ベクトル場 

 


定義(多様体Mの微分同相1径数変換群)

多様体Mの C^r微分同相1径数変換群とは直積 \mathbb{R}×M から M への写像 g で下の条件を満たすものである。

 

g:\mathbb{R}×M \to M, g(t,x)=g^tx, t \in \mathbb{R},   x \in M

(1) gC^r写像

(2) 任意の t \in \mathbb{R} に対し、写像 g^tx:M \to M微分同相写像
(3) 写像の族 {g^t:t \in \mathbb{R}}M の一径数変換群

 

 

 

 


定義(相速度 \mathbb{v}(x)

(M,{g^t})ユークリッド空間中の多様体Mの微分同相一径数群で定義された相流とする。流れ g^t の点  x \in M での相速度 \mathbb{v}(x) とは、相点の運動の速度ベクトル

 \frac{d}{dt}|_{t=0}g^tx=\mathbb{v}(x)

のことである。

 

 

 

 


定義(相速度ベクトル場)

M 上のベクトル場 \mathbb{v} とは、M の各点 x に対し、x を始点とするベクトル \mathbb{v}(x) を対応させる対応である。

特に、ベクトルが0となる点をそのベクトル場の特異点という。
 

 

 

相速度ベクトル場とベクトル場

 


定義(ベクトル場)

MC^{r+1} 級のなめらかな多様体TM をその接バンドルとする。M 上の C^r 級ベクトル場 \mathbb{v} とは、C^r 級のなめらかな写像 \mathbb{v}:M \to TM であって、写像 p\circ \mathbb{v}:M \to M が恒等写像であるものを言う。ただし、p: TM \to M は射影とする。
 

 

注:M が座標 (x_1, ... , x_n) をもつ空間 \mathbb{R}^n の領域なら、この定義は相速度ベクトル場と一致する。 

 
一般に、曲面 M 上の各点 p においてある接ベクトル X_p が定義されていて、それが p について微分可能である時、その接ベクトル全体のことをベクトル場といい、X={X_p}_{p\in S} のように表すことにします。点 p\in S における接ベクトルを {X_p} と書くことにします。ベクトル場の接べクトルが0になるような点のことを特異点と言います。

  

ベクトル場の特異点の指数

多様体の向き

 

曲面上の各点で、時計回りと反時計回りの二種類の向きを定めることが出来ます。ある点で向きをひとつ指定すると、その点の近くの任意の点でそれと同じ向きが定まり、これを互いに「同調する向き」といいます。

曲面上の一点である向きを指定し、その点を出発する曲線上の各点に同調する向きを次々と入れて、曲線が出発点に戻ってくるような閉曲線を考えます。どのような閉曲線に沿って向きを伝播させても必ず元の向きに戻るとき、その曲面は向き付け可能といいます。 

 

 以下の図は有名な向き付け不可能な多様体メビウスの輪)の例です。

 

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閉曲線の指数


向きのついたユークリッド平面上のベクトル場を考えます。平面上に向きの付いた閉曲線が与えられていて、これがベクトル場の特異点を通らないと仮定します。点がこの曲線をひとつの向きに一周するとすると、考えている点でのベクトル場のベクトルは点が曲線状を動くのに応じて連続的に回転します。点が曲線を一周して元の位置に戻ると、ベクトルも元の位置に戻ってきますが、この間にベクトルはどちらかの向きに何回転か(n回とする)しています。このときのnを曲線の指数といいます。

 

これだけではちょっと分かりにくいですが、良い参考文献を見つけました!!!

 

改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門

改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門

 

 

この本の挿絵が素晴らしいです。。(あっ!千葉先生だ!)

 

以下のようなベクトル場の特異点の指数を計算したいとき・・・

f:id:mathcafe_japan:20171214232027p:plain

 

こんな風に考えます。

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厳密な定義は次の通りです。

 


定義(指数)

X={X_q}_{q\in S} を曲面 M 上のベクトル場、点 p\in S をその特異点とする。\mathbb{e}_1,\mathbb{e}_2 を点 p 近傍の各点で定義された接ベクトル空間の正規直交基底、\theta を各点 q において接ベクトル X_q\mathbb{e}_1 がなす角とする。特異点 p を囲む単純閉曲線 C に対してベクトル場 X の点 p における指数を

\gamma_p(X)=\frac{1}{2\pi}\int_C d\theta

で定義する。ただしCは点 p 以外の特異点を含まないものとする。
 

 





指数の性質 

 

性質1: 閉曲線の指数は曲線が連続的に変化しても、特異点を曲線が通らない限り不変。

性質2 : 曲線の指数はベクトル場の連続的な変形に対し、変形の途中で曲線状に特異点が現れない限り不変。

 

 

特異点以外ではベクトル場の方向は連続的に変化し、従って回転回数は曲線に対し連続的に変化する。回転回数は整数だから一定。

 

 Remark

複素平面 \mathbb{C} から原点を除いたところで、ベクトル場が \mathbb{v}(z)=z^n (nは正とは限らない整数)で与えられている。曲線 z=e^{i\phi}、向きは [\phi] の増加の方向とするとき、この閉曲線の指数は  n

 

 

正確な証明や、回転数との類似についての考察を書きたかったのですが間に合わなかったのでこの辺は証明割愛させてください。。。涙

 

 

 定理

平面上のベクトル場を考える。D を円板、S をその境界とする。
閉曲線 S の指数が0でなければ、領域 D の内部に少なくとも1つの特異点が存在する。

 

 

 証明のアイデア

もし特異点がなければ、SD の内部で特異点を通らずに連続的に変形して、D の平常点 O *4に十分近い曲線が得られる。こうして出来た小さい曲線の指数は0であるが、変形によって指数は変わらない。従って最初から指数は0。

 

 

代数学の基本定理の証明

 

さて、代数学の基本定理のベクトル場を使った証明に入ります。

まずは復習から。

 

 

定理
定数でない任意の複素数多項式 f(z) は少なくとも1つの複素数の根を持つ。
ただし、複素多項式とは、a_0, a_1, ... , a_n複素数 n自然数とするとき、
 f(z)=a_nz^n + a_{n-1}z^{n-1}+\cdots+a_1z+a_0
という式で表される複素関数のことである。この多項式の根は、f(z_0)=0 を満たす複素数z_0のことである。

 
a_n=1 として考えて良い。

複素平面z上のベクトル場 \mathbb{v}(z)=z^n + a_{n-1}z^{n-1}+\cdots+a_1z+a_0 を考える。ベクトル場 \mathbb{v}特異点が、考えている方程式の根である。
 
 

補題

半径が十分大きな円周の、 このベクトル場での指数はnである。

 

 

 

 


補題の証明
\mathbb{v}_t(k)=z^n + t(a_{n-1}z^{n-1}+\cdots+a_1z+a_0), 0\leq t \leq 1
は、元のベクトル場からベクトル場 z^n への連続的な変形を定義する。
r>1+|a_{n-1}|+\cdots+|a_1|+|a_0|
と置くと、r^n>|a_{n-1}|r^{n-1}+\cdots+|a_1|r+|a_0| である。従って半径 r の円周上には変形の途中で、\mathbb{v}_t(k)=0 となる特異点は現れない。指数の性質2より、この円周の元のベクトル場とベクトル場 z^n での指数は等しい。ところがRemarkよりベクトル場 z^n での指数は n である。Q.E.D.

 

 

 


代数学の基本定理の証明

先に挙げた定理より、半径 r の円の内部にベクトル場の特異点、すなわち方程式の根が存在する。よって代数学の基本定理は示された。Q.E.D.

 

 

 

 最後におまけ

 

 

Hopfの指数定理
コンパクト有向多様体M上のベクトル場の指数の和はMのEuler標数

 

 

これから証明理解したいです!

 

 

 

感想

今年は1月から女性向け数学講座と銘打って、自分のガロア理論の基本定理の発表をすることとなりました。その際に代数学の基本定理については少しだけ学んでいました。

時は流れて、9月の千葉先生のご講演に先立ち、予習回として力学系の基礎や関数解析を学び、また12月には、2月の微分幾何の予習回として多様体の基礎を学び始めています。

 

今朝、多様体上の微分方程式の面白い性質ないかな〜と思い、本*5の、ベクトル場の特異点の指数のあたりをふんふんと読んでいるたら、突然あっという間に代数学の基本定理が証明されていて、満員電車の中でとっても驚きました。代数学の分野の話が、こんなところにつながるのか〜〜と。。。


数学の面白さの1つは、色んな数学を使って1つの物事を表せることだと思います。今朝はそんな瞬間を味わうことができてとても楽しかったです!しかし、やっと面白いところの入り口に立ったようなものなので、これから気を引き締めて勉強していきたいと思います!!!!!また、もう少し上手く伝えられるように今後も頑張っていきたいですのでどうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、明日はUnaoyaさんによる、Selberg trace formulaです。楽しみですね!
よろしくお願いいたします!!!!

 

参考文献

 

 

常微分方程式

常微分方程式

 

 

 

 

代数学の基本定理

代数学の基本定理

 

 

 

 

多様体の基礎 (基礎数学5)

多様体の基礎 (基礎数学5)

 

 

 

 

微分幾何学とトポロジー

微分幾何学とトポロジー

 

 

 

 

微分形式と代数トポロジー

微分形式と代数トポロジー

 

 

 

 

微分形式の幾何学 (岩波オンデマンドブックス)

微分形式の幾何学 (岩波オンデマンドブックス)

 

 

 

 

改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門

改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門

 

 

 

*1:

 

関数解析 共立数学講座 (15)

関数解析 共立数学講座 (15)

 

 

*2:微分形式の幾何学

 

微分形式の幾何学 (岩波オンデマンドブックス)

微分形式の幾何学 (岩波オンデマンドブックス)

 

 

*3:力学系とは何か明示してはいませんが、例えばこちらなどが気軽に概要が掴めて良いのではないかと思います。

http://www.jst.go.jp/crest/math/ja/suugakujuku/archive/text/1_Arai2.pdf

*4:平常点の定義を調べても、掲載している書籍やその他の書籍に掲載されていませんでした。。特異点でない点であるという認識ですが、正確に分かり次第追記します!

*5:

 

常微分方程式

常微分方程式